大腿骨頚部骨折・大腿骨転子部骨折
症状
- 股関節部(脚の付け根)に痛みがあり、ほとんどの場合、立つことや歩くことができなくなります。
病態
- 大腿骨は股関節からすぐのところ(大腿骨頸部)で曲がっています。人間はその曲がった大腿骨でからだを支えていますが、曲がったところは転倒や転落の時に外力が集中しやすく、骨折しやすいのです。
この骨折は骨粗鬆症で骨がもろくなった高齢者に多発することで有名ですが、わが国では年間10数万人が受傷し、多くの方が骨折を契機に、寝たきり、閉じこもりになってしまうので社会問題となっています。 - 医学的には、病態が大きく異なりますので、関節の中で折れる場合(大腿骨頸部内側骨折)と、それよりもう少し膝側の関節外で折れる場合(大腿骨頸部外側骨折)の2つに分けて考えます。
頸部内側骨折は、骨粗鬆症がある場合、ちょっと脚を捻ったぐらいでも発生します。よくあるのは高齢者が何日か前から足の付け根を痛がっていたが、ある時急に立てなくなったというエピソードです。おそらく立てなくなった時、骨折部で「ずれ」が生じたのでしょう。
一方、外側骨折は、明らかな転倒、転落で発生します。
両者の大きな違いは、内側骨折は血液循環が悪いため骨癒合が得られにくいが、その一方関節内のため、周りにスペースがなく内出血も少ないことに比べ、外側骨折は、骨癒合は得やすいが、受傷時の外力も大きく、内出血もするため全身状態に影響が出やすいということです。
観血的整復固定術
X線で透視をしながら骨折部を整復します。離れてしまった骨を可能な限り骨折する前の状態に戻してから、スクリューやプレートを使って骨を固定します。
- 手術データ
- 麻酔脊椎または全身
- 手術時間1時間程度
- 手術創5cm程度
- 入院期間3週間程度
- 術後の効果
- 歩行能力の回復には、受傷前の歩行能力と年齢が大きく影響すると信じられています。術後、積極的にリハビリを行っていただくことで、けがをする前の歩行能力に戻る可能性が高くなります。
人工骨頭挿入術
骨折した大腿骨頭を摘出し、金属とプラスチックでできた人工骨頭を大腿骨に差し込んで取り付け、骨セメントで固定します。
- 手術データ
- 麻酔脊椎または全身
- 手術時間2時間程度
- 手術創8cm程度
- 入院期間3週間程度
- 術後の効果
- 歩行能力の回復には、受傷前の歩行能力と年齢が大きく影響すると考えられています。術後、積極的にリハビリを行っていただくことで、けがをする前の歩行能力に戻る可能性が高くなります。